流行っている飲食店
飲食店でアルバイトをしていたことがあった。
そこは基本、洋食屋さんのような感じで、結構、流行っていて、その辺りでは老舗でみんな知っているような店でした。
どちらかというと、そこまで大きい店ではなく、時間帯では厨房もホールもこなさなくてはならい感じだった。
常連客も多くお客様との距離も割合近く、雰囲気もいい店でした。
働き始めた時は基本、接客と皿洗いなど雑用だったのですが、慣れてくると、たまに厨房が忙しい時に、サラダを作ったり、誰でもできるような軽作業で厨房に入ることがあった。
嫌な雰囲気
忙しい時しか厨房に入って作業をすることがなかったので、わからなかったが、普段、優しい人たちでも、オーダーの数が多すぎて、頭の中が整理できず、イライラしたり、少しパニックになったり、何か聞かなくてはいけないことも、聞けない雰囲気になる。
その中で勇気を振り絞って聞くことがあるのだが、ここで何となく人の本性が見える気がした。
知らない振りをする人。
○○に聞けと人に振る人。
そんなこともわからないのか、と理不尽に怒る人。
こんな感じで忙しいとみんな変わるんだなと、少し寂しくなった。
最悪なナンバー2
その中でも、この店のナンバー2みたいな人がいて、その人には気を付けるように言われていた。
しかし、そういう状況でもナンバー2に聞かなくてはいけないことがあり、聞くのですが、俺に聞くな、みたいな嫌な顔をされたり、怒りながら、二度と聞くな、みたいな口調で言われるなど、この人に聞いて気持ちのいい答えが返ってくることはなかった。
しかし、オーナー店長の山田さん(仮名)と話をするときのナンバー2は、周りが聞いていてもわかるようなゴマをする人で、お客様からのクレームでも絶対出ていかないような、強きに弱く、弱きをくじく典型だったのであまりよくは思われていなかった。
オーナーの山田さんは優しいが、厳しいところもあり、経営者としても、人間的にも魅力のある人でした。
ある日、厨房の一人が長く休まなければいけなくなり、仕込みから入って欲しいと言われ、仕込みから入ることになった。
その時は料理もほぼ、したことがなく、一からみたいなものだったので覚えることもかなり多かったのですが、いろんな人に優しく教えていただき、何とか1か月もすれば、与えられたことくらいはできるようになった。
しかし、ナンバー2教えてもらうときは、嫌な顔をされたり、手が遅い、段取りが悪い、など必ず1度は怒られるか、小言みたいなことを言われ、さすがにその時は、イーっとなった。
職人
初めてハンバーグの用意をするように言われ、材料を大きなボールにいれ、レシピを見ると、塩の横が空欄だった。
この店は何種類かの料理のレシピで、調味料の横が空欄のある料理があり、その料理は、その日の状況でオーナーが決めるところがあるらしく、知らなかったので、誰かに聞こうと周りを見回した。
最悪なことに、そばにはナンバー2しかいなかったので、ナンバー2に聞いてみた。
そんなこともわからないのか!
と言いつつ、ハンバーグの材料が入ったボールを見て、
少し待ってろ。
オーナーを連れて来て、オーナーに聞いた。
今日の塩はどうしましょう?
オーナーは塩の入った容器から1つまみ取って入れ、1つまみ取ってと繰り返す。
えーっ!グラムとか小さじとかじゃないのか!ここだけ職人の勘かよ 驚き、見ていた。
今日は5つまみで。
今日は5山田だ!覚えとけ!
笑いながら言っていた。は~っ、お前はなんだ!何が5山田だ、だ。大さじ5杯みたいに言うな。と思い、用意ができたので混ぜようと、横にあったハンドブレンダーのような混ぜる機械で混ぜようとした時、
手で混ぜるんだよ、機械なんか使ってどうすんだよ。
すみません。
混ぜようとするとオーナーが来て混ぜ方をを教えてくれた。そしてオーナーは混ぜながらこう言った。
機械で混ぜると時間も早く、むらなく混ざるけど、こうやって手で一生懸命、愛情込めて混ぜる方が、なぜだかわからないけどおいしくなるんだよ。
そんなもんですか?
それに、理屈では説明つかないんだけど、お客様に持っていく時にスタッフが笑顔で持って行ってくれれば、なぜかもっとおいしくなるんだよ。
それを聞いて、名言出ましたと、心の中に刻まれました。
次の日、ナンバー2がハンバーグを混ぜているのを見て、お客様には悪いが、こいつのまぜたハンバーグは食べたくない。愛情こもってなさそう。そう思うと同時に、こいつみたいな人間には絶対にならないと心に決めるのでありました。
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